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中小企業経営力強化税制の活用ガイド|制度改正のポイントと実務対応

中小企業を取り巻く経営環境は、人口減少、デジタル対応の遅れ、人材不足など、構造的な課題に直面しています。そうした中でも、業務改善・生産性向上に向けた「攻めの投資」を継続的に実行できる企業こそ、これからの時代を生き残ることができるといえるでしょう。そこで注目されるのが、「中小企業経営力強化税制」です。この制度は、生産性向上設備の導入を支援するための税制優遇措置であり、企業が行う前向きな設備投資に対して、税額控除または即時償却という形で後押しをしてくれるものです。この記事では、2025年度税制改正による制度変更点も踏まえつつ、中小企業経営力強化税制の基本と実務的なメリット・デメリットを整理して解説します。

1. 中小企業経営力強化税制の制度概要と改正のポイント

中小企業経営力強化税制は、日本の経済産業省が管轄して制定された制度であり、企業が生産性向上のために行う設備投資に対して税額控除や即時償却の優遇措置を設けております。この制度が導入された背景には、日本が抱える人口減少や経済成長の停滞という深刻な問題があります。このような環境下、企業が持続的に成長するためには、積極的な投資が不可欠とされ、多くの中小企業がその恩恵を受ける必要があります。

1-1. 制度の概要

中小企業経営力強化税制は、経済産業省のもとで運用されている税制支援策で、企業の業務効率化・競争力強化を目的とした設備投資に対して、税制上の優遇措置を提供する制度です。対象となる企業は、資本金1億円以下、または従業員数1,000人以下の法人(個人事業主も含む)で広範囲に設定されています。

製造業や建設業はもちろん、小売・飲食・介護・物流など、業種を問わず利用できる制度であり、実務上の活用範囲は非常に広いのが特徴です。制度の適用には、「事前申請」と「認定経営革新等支援機関(税理士・会計士等)の確認書」が必要となります。

1-2. 2025年度の制度改正ポイント

2025年度の税制改正により、以下の点が変更されました。

制度の延長
適用期限が2年間延長され、2027年3月末まで利用可能に。

・C類型(デジタル化設備)の廃止
クラウドサービスやソフトウェアの設備投資に使われていたC類型が廃止され、今後のデジタル関連投資は他制度の活用が求められる。

・B類型(収益力強化設備)の基準引き上げ
投資収益率の基準が5% → 7%に引き上げられ、制度活用にはより高い収益性の裏付けが必要に。

この改正により、制度を使いこなすには、計画性と費用対効果の可視化がますます重要になりました。

1-3. 優遇措置の選択肢と活用戦略

本制度では、企業の財務状況や成長フェーズに応じて以下の2つの優遇措置から選択可能です。

【1】即時償却
設備投資を行った年度内に全額を即時消却することができるため、その年度の利益を減少させ、結果として税負担を軽減できます。特に利益が見込まれる年に設備投資を実施することで、大幅な減税効果を得られる点で、キャッシュフローを良化する機会を与えてくれます。

【2】税額控除(10%)
企業の成長段階に応じて、未来の利益が見込まれる場合、税額控除を選択することが最も有利になることがあります。この選択肢により、企業は資金需給に基づいた戦略的な経営が可能になります。

これにより、企業は税戦略に柔軟性を持たせた経営判断が可能となります。

2. 5つのメリットと実務効果

2-1. 法人税を効果的に軽減できる

即時償却により、大きな設備投資でもその年に全額費用化できるため、税負担を一気に下げられます。たとえば1,000万円の設備投資を行った場合、300万円近い税効果が期待できます。

2-2. キャッシュフローの改善につながる

税負担が軽減されることで、手元資金に余裕が生まれ、次なる投資や運転資金への活用が可能になります。資金繰りが厳しい中小企業にとっては大きなメリットです。

2-3. 成長フェーズに応じた税戦略がとれる

税額控除と即時償却のいずれかを選べるため、赤字・黒字のタイミングに応じた最適な活用が可能。経営計画に柔軟性を持たせることができます。

2-4. 競争力の向上と従業員満足の向上

設備の更新や自動化は、生産性向上だけでなく、従業員の作業環境改善にもつながり、人材定着や満足度向上にも寄与します。

2-5. 他の補助金制度と併用できる

ものづくり補助金や事業再構築補助金など、他の制度と併用できる可能性もあり、導入費用をさらに軽減する設計が可能になります(※併用の可否は個別確認が必要)。

3. 5つのデメリットと実務上の注意点

3-1. 事前申請が必須でスケジュールがタイト

制度適用には、設備導入前に経済産業局へ申請し、認定支援機関の確認書を取得する必要があります。納品スケジュールを考慮し、余裕をもって準備しなければなりません。

3-2.書類作成が煩雑

制度適用には事業計画、費用対効果の説明、対象設備の明細など詳細な書類作成が必要です。多くの場合、税理士や支援機関との連携が不可欠です。

3-3. 設備費用は全額自己負担

税の優遇はあるものの、補助金ではないため、設備投資額はすべて企業負担。資金繰りが厳しい企業には実質的に利用が難しい場合もあります。

3-4. 想定通りの成果が出ないリスク

投資しても業務改善が進まなければ、回収が遅れる可能性があります。社内での運用体制や教育が整っていないと、導入効果が薄れる懸念もあります。

3-5.税務調査での説明責任が増す

制度適用後に税務調査が入った際、書類不備や要件不足があると、否認されるリスクがあります。制度活用時には証拠書類の保存と論理的説明が求められます。

4. まとめ

中小企業経営力強化税制は、単なる節税対策ではありません。企業が自社の課題と向き合い、設備投資によって「経営改善」や「未来への布石」を打つことを促す、戦略的な制度です。
制度を活かすも殺すも、その活用設計次第。制度が延長された今こそ、計画的に設備投資を見直し、成長戦略と税制優遇を連動させた実行力が求められます。
まずは、顧問税理士や認定支援機関と連携し、貴社にとって最適な投資戦略を設計するところから始めてみてはいかがでしょうか。

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