本記事では「かぼちゃの馬車事件~スマートデイズとスルガ銀行の不祥事」について解説します。
スマートデイズが展開した女性専用シェアハウスの「かぼちゃの馬車」事件は、騙しが横行する日本の不動産業界の縮図といっても過言ではありません。「かぼちゃの馬車」を中心としてスルガ銀行の不正融資疑惑などについて解説します。
1.スマートデイズが展開した「かぼちゃの馬車」ビジネススキームのおさらい
「かぼちゃの馬車」とはスマートデイズが展開する女性専用シェアハウスのことをいいます。もともとのコンセプトは、上京を夢見る女性をターゲットに住まいと仕事を紹介するというコンセプトでした。不動産投資という意味合いだけではなく、女性の社会進出や上京する女性の夢を応援したいという理念に共感をして不動産投資の決断をされた投資家も少なくありません。
2014年ころからスマートデイズは「かぼちゃの馬車」を販売しはじめました。商品の特徴は30年一括借り上げのサブリース契約です。サブリース契約の内容は入居率90%以上、年利回り8%以上を保証するものでした。
「かぼちゃの馬車」に投資するには、土地の購入と建物の建築が必要です。不動産投資とは切っても切れないのが不動産ローンですが、「かぼちゃの馬車」の不動産に積極的に不動産ローンを貸していたのがスルガ銀行です。スルガ銀行が土地の購入と建物の建築費のすべてを融資していました。
自己資金が一切必要のないフルローンと不動産賃貸管理中のストレスがないサブリース契約により「かぼちゃの馬車」の販売は順調、多くの投資家が「かぼちゃの馬車」に不動産投資をしたワケです。
2.「かぼちゃの馬車」ビジネススキームの騙しの手口
冒頭で「かぼちゃの馬車」は騙しが横行する日本の不動産業界の縮図と言いましたが、「かぼちゃの馬車」のビジネススキームには代表的な不動産業界の騙しが隠されています。
2-1.買取転売による土地の販売
「かぼちゃの馬車」に投資するにはまずは土地を購入しなければなりません。スマートデイズは地主から一度土地を購入し、自社の利益を乗せた価格で投資家に販売していました。いわゆる買取転売をしていたのです。買取転売の場合、不動産会社の利益が乗っている場合がほとんどのため、不動産相場よりも高い土地を買わされていたことになります。
2-2.法外な建築費用
「かぼちゃの馬車」に投資するには、土地を購入後シェアハウスを建築しなければなりません。スマートデイズは建築会社を指定しており、建築会社からスマートデイズに建築費用をキックバックしていました。建築会社はスマートデイズにキックバックをするために本来よりも高い建築費を投資家に請求することになります。「かぼちゃの馬車」の投資家は相場よりも高い建築費を支払っていたことになります。
3-3.担保不足の不動産に対してフルローン
不動産投資と不動産ローンは切っても切れない関係ですが、「かぼちゃの馬車」の不動産に積極的に融資をしていたのがスルガ銀行です。買取転売により相場よりも高い土地代とキックバックによる高い建築費であれば、融資の担保としては不十分になるのが当然ですが、スルガ銀行は「かぼちゃの馬車」の収益や投資家の信用情報、収入などを改ざんすることによりフルローンを実現していました。「かぼちゃの馬車」は本来の不動産価値以上の融資を受けて「かぼちゃの馬車」に投資をしていたことになります。
3.「かぼちゃの馬車」を展開したスマートデイズが倒産するまで
2014年ころから順調に販売していた「かぼちゃの馬車」に陰りが見えはじめます。そのきっかけとなったのがスルガ銀行からの貸し渋りです。融資をとめられてしまった「かぼちゃの馬車」は次第に売れなくなっていきました。
また、当初はなんとか稼働率を維持していた「かぼちゃの馬車」ですが、じりじりと稼働率が下がり稼働率が50%の不動産や最悪の場合稼働率が30%までに下がった不動産もありました。稼働率が下がるとサブリース料の支払いを維持することができません。2018年ころから投資家へのサブリース料の配当が滞りはじめました。
あらたな「かぼちゃの馬車」の販売ができず、サブリース料を支払えないスマートデイズは民事再生法適用申請をしましたが、裁判所より棄却され破産手続きをすることになります。2021年には破産手続きが完了し、スマートデイズは倒産することになりました。
フルローンとサブリースといった不動産投資としてのメリットと夢を追いかける女性を応援するというコンセプトで人気を博した「かぼちゃの馬車」ですが、スマートデイズの倒産で幕を下ろしました。被害者は1,258名に上り、被害総額は440億円となりました。スマートデイズが倒産し、「かぼちゃの馬車」というブランドはなくなりましたが、「かぼちゃの馬車」の投資家には相場よりも高く買ってしまった不動産と回収の見込みのない不動産得ローンが残りました。
4.「かぼちゃの馬車」投資家の矛先はスルガ銀行へと向いた~現代版徳政令
「かぼちゃの馬車」の投資家はサブリース契約の不履行を理由にスマートデイズを訴えた投資家もたくさんいましたが、残念ながらスマートデイズには資金がなく裁判に勝訴したとしても資金を回収するのは困難な状況でした。スマートデイズが倒産してからは訴える対象すらも失ってしまったのです。
次に投資家の矛先が向いたのがスルガ銀行です。もともと不動産得ローンを貸さなければ投資ができなかった、スマートデイズと結託していたという理由でスルガ銀行と争うことになりました。そもそもスルガ銀行は書類の改ざんがあったものの、不動産ローンとしては違法なことはありません。社会道義的に改ざんについての責任を問われていました。「かぼちゃの馬車」の投資家も株主総会でデモを行ったり、被害者の会を結成し団体交渉をしたりと様々な活動をしていました。
結果、日本の金融史上初の奇跡が起こります。スルガ銀行は「かぼちゃの馬車」に対する不動産ローンを担保物件と引き換えに債権放棄をする決断をしました。もともとフルローンであり担保としては不十分だった不動産だったため、「かぼちゃの馬車」の投資家は損失を最小限にすることができたのです。
スルガ銀行は担保不動産をファンド会社に売却しました。もともと担保不足の不動産だったためにファンド会社に売却しても89億円もの損失となりました。
このスルガ銀行の対応は賛否両論です。あくまでも投資は自己責任という主張とそもそも詐欺だったという主張が対立しています。投資家への影響だけではなく、89億円の損失ともなれば株価が急落しスルガ銀行の株主へも影響が及びます。とはいえ、スルガ銀行の現代版徳政令は「かぼちゃの馬車」事件を収束させたのは間違いありません。
5.まとめ
「かぼちゃの馬車」事件には不動産業界の代表的な騙しの手口が隠されています。サブリース契約の料率改定や契約解除は他の不動産会社でも起こるトラブルですし、買取転売して向けるのは不動産業界の中では当たり前です。また、不動産業界と金融機関との癒着もなくなることはありません。「かぼちゃの馬車」事件を正しく理解することで、これから不動産投資にチャレンジする投資家のヒントになるはずです。
スマートデイズが展開した「かぼちゃの馬車」とスルガ銀行の改ざん及び不正融資はその後の不動産ローンに大きな影響をあたえました。不動産に対する金融機関の審査が著しく厳しくなり、自己資金なしでは不動産投資にチャレンジできなくなってしまいました。徐々に審査基準は緩和されているものの、不動産投資の障壁が上がったことに間違いはありません。
「かぼちゃの馬車」事件は決して特別ではありません。日本の不動産業界は魑魅魍魎の世界、騙し騙されは当たり前の世界、一般消費者が成功するのは難しい世界なのです。これを応用し海外不動産でも同じようなビジネスモデルで販売している不動産会社があるのでご注意ください。 海外不動産でもアメリカを中心とした先進国不動産であれば、日本よりも透明かつ公平な不動産情報を収集することができます。正しい知識を身に付ければ日本の不動産投資よりも成功の確率は上がります。超少子高齢化、生産性低下する日本ではなく、不動産投資をするのであれば海外不動産を検討されることをオススメします。
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