海外資産運用に関心を持つ富裕層や国際志向のビジネスパーソンの間で、「どの金融商品を使って資産を守り、増やすべきか」という問いはますます重要性を増しています。特に近年は、香港の貯蓄型保険、オフショア積立保険、オフショア預金、海外ETFといった選択肢が注目を集めており、それぞれの特徴を正しく理解して使い分けることが、資産管理の巧拙を左右するといっても過言ではありません。
本記事では、これら4つの商品を「利回り・流動性・安全性・税務・相続」という5つの軸で徹底比較し、さらにライフステージ別の活用戦略と税務上の留意点、構造的な運用設計の考え方まで、実務家目線で深掘りします。

1. オフショア各商品の概要と特徴
1-1. 香港貯蓄型保険
香港貯蓄型保険は、長期の元本確保型で一定の積立を行うことで保険会社のボーナス配当が加算され、想定利回りは3〜5%程度です。契約期間は10〜20年以上が一般的で、途中解約には元本割れのリスクやペナルティが伴います。契約者・被保険者変更や受取人設定も柔軟で、資産承継ツールとしての活用も可能です。
1-2. オフショア積立保険(IFA経由)
オフショア積立保険は、海外IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)を通じて契約するファンド選択型の長期積立商品です。利回りは4〜8%が期待される一方で、運用成績や手数料体系によってリターンは大きく左右されます。解約時のコスト負担が大きく、長期で運用する前提で設計する必要があります。
1-3. オフショア預金(海外銀行口座)
オフショア預金は、香港やシンガポールなどの銀行で外貨預金口座を開設して運用します。流動性は極めて高く、いつでも出金可能です。金利は1〜3%前後と控えめで、資産を増やすより「置いておく」資産としての役割が中心となります。
1-4. 海外ETF(Exchange Traded Fund)
海外ETFは、米国やシンガポールなどの証券取引所に上場するETFに投資します。分散性・低コスト・高い流動性の三拍子が揃い、S&P500や全世界株式など、年5〜10%超の利回りも期待できます。自己運用が前提となり、市場変動リスクを直接受ける点には注意が必要です。
2. 5つの軸で見極める:何を基準にオフショア商品を選ぶべきか?
海外資産運用では、商品単体のスペックではなく、「自分のポジションや目的に対してどのように機能するか」を基準に選ぶ必要があります。その判断軸となるのが、「利回り・流動性・安全性・税務・相続」の5要素です。
まず利回りに着目すると、最も期待値が高いのは海外ETFです。米国株市場全体に投資できるETF(例:VOOやVTI)は、長期的に5〜10%超の年率成長も見込める商品です。次点はオフショア積立保険で、ファンド次第では中〜高リスクのポートフォリオによる利回りが狙えます。一方、香港貯蓄型保険は元本確保+配当で安定志向、オフショア預金はほぼ資金の待機用途に特化します。
流動性においては、海外ETFとオフショア預金が圧倒的に優位です。ETFは市場時間中であれば即売却でき、預金は口座があれば即出金可能です。これに対して、香港貯蓄型保険やオフショア積立は解約にペナルティや制限がある長期商品であり、急なキャッシュ需要に向きません。
安全性の観点では、保険商品は保険会社の信用格付け、預金は銀行の財務基盤、ETFは市場そのものの安定性がリスク要因です。特に保険会社選定時にはグローバル格付機関(S&P、Moody’s等)の評価を必ず確認すべきです。
税務面ではすべての商品がCRS(共通報告基準)の対象であり、日本在住者は適切な申告が必要です。ETFは配当・譲渡益課税、保険商品は一時所得・雑所得課税、預金は利息課税の対象となるため、契約内容・報告義務・所得区分の理解と専門家連携が不可欠です。
最後に相続対応という視点では、保険商品に軍配が上がります。受取人設定や契約者変更により、柔軟な承継設計が可能な香港貯蓄型保険は特に相続戦略と相性がよく、法的にも「受取人固有の財産」として分割対象から外れる場合があります。一方で、海外ETFや預金は法定相続手続きが必要で、凍結リスクや移転負担が生じる点に留意すべきです。
3. ライフステージ別に考える:おすすめスキームの組み合わせ方
オフショア商品は、単独で考えるのではなく、「誰が、どの段階で、何を目的に使うか」に応じて構造的に組み合わせて使うのが基本です。ここでは代表的な3つのパターンに分けて整理します。
3-1. 若手会社員(30代前半・資産形成期)
資産形成フェーズでは「貯める力」と「成長を狙う力」のバランスがカギとなります。たとえば、香港貯蓄型保険で強制的な積立構造を作りつつ、ETFで成長も取りにいくのが合理的です。預金を流動性のバッファーとして少額持つことで、キャッシュニーズにも備えられます。
3-2. 富裕層(年収3,000万円超・資産1億円超)
この層では「守り」と「承継」がテーマになります。香港保険+オフショア積立で資産承継・分散投資の枠組みを作り、ETFで適度な市場リターンを取りにいく構成が効果的です。預金は緊急時の資金や国際送金のハブ口座として活用。契約者や受取人の設定により、相続リスクも抑えられます。
3-3. 海外移住者・移住検討層
海外居住を視野に入れる場合、税制リスクと資産移動の柔軟性が重要です。まずはETFや預金での運用を基本としつつ、移住後の制度に応じて保険商品の契約見直し・ポートフォリオ再編を検討します。送金や資金引き出しに制限がある国もあるため、事前に資金導線の設計と移行時期の調整が必要です。
4. 税務と規制の視点での注意点
オフショア資産運用においては、今や「隠す」時代ではなく、「管理する」時代です。CRS制度の普及により、海外口座や保険契約の情報は自動的に日本の税務当局に報告されるため、確定申告や報告義務を果たすことは当然の前提となっています。たとえば、ETFの配当や売却益は申告分離課税(20.315%)の対象となり、損益通算や繰越控除といった管理が求められます。保険商品の解約返戻金や満期金も課税対象となり得るため、「非課税と思っていた」という誤認はリスクに直結します。
また、政治体制の変化や国際関係の悪化によって、資産の移動や引き出しが規制されるリスクも無視できません。たとえば資本規制がある国では、保険の解約金やETF売却代金の引き出しに制限がかかることもあります。
したがって、税務上の透明性・合法性を担保しつつ、規制環境や通貨流動性にも配慮した設計が求められる時代です。税理士・法務専門家との連携が、いまや海外運用の必須パートナーとなっています。
5. まとめ
オフショア戦略を考える際、「どの商品が儲かるか」ではなく、「その商品が全体構造の中でどの役割を果たすか」という発想が最も重要です。たとえば、香港貯蓄型保険はキャッシュフローをロックする代わりに安定性・相続対応性・保全性を担保します。一方でETFは成長エンジンであり、預金はキャッシュ導線の“潤滑油”となります。
このように、個別商品の良し悪しではなく、組み合わせの設計こそが資産戦略の核です。制度を理解し、商品の制約も味方に変える。この「構造設計の視点」なくして、現代のグローバル資産管理は成立しません。
制度改正や移住、家族構成の変化に応じて、構造は“動的”に進化させるべきものです。単発の節税テクニックに依存せず、自らの全体像を俯瞰し、10年後、20年後の自分の資産地図を設計する視点が問われています。
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