近年、資産管理や海外投資の拠点としてシンガポールが注目を集めています。法人税制の優遇や安定したビジネス環境に支えられ、世界中の富裕層や投資家がシンガポールに拠点を置く動きが広がっています。金融立国としての基盤が確立していることから、法人設立は資産運用の自由度を飛躍的に高める選択肢となります。
一方で、法制度や税制との兼ね合いからリスクも存在するため、正しい理解と準備が欠かせません。ここでは、シンガポール法人設立のメリットとデメリットを整理し、成功のポイントを解説します。
1. まぜシンガポールが選ばれるのか?
シンガポールは、アジアの経済・金融の中心地として、世界中の企業や投資家から注目を集めています。その背景には、税制の優遇、資金移動の自由度、法制度の透明性、そしてASEANのハブという地理的優位性があります。
1. 低い法人税率
シンガポールの法人税率は一律17%と、国際的にも低水準です。日本の実効税率が約30%超であることを考えると、明確な競争優位性があります。さらに、新設法人や中小企業には税額控除が適用され、実効負担をさらに下げることも可能です。これは資産運用の効率を高めるだけでなく、企業の国際展開を後押しする大きな魅力です。
2. 資金移動の自由度
シンガポールでは資金移動の規制が緩やかであり、海外送金や国際取引がスムーズに行えます。資金繰りやキャッシュフローの柔軟性が確保されるため、多国籍企業や投資家にとって大きな利点となります。国際的な市場機会を即座に捉えられる点は、他国と比較してもシンガポールの強みです。
3. 英語環境と法制度の安定性
公用語が英語であるため、契約書や商取引の実務における言語障壁が低いのも魅力です。加えて、シンガポールは英国法を基盤としたコモンローを採用しており、契約社会としての法的安定性があります。法制度が整っていることで、海外投資家も安心して事業を展開できる環境が整っています。
さらに、ASEANの中心に位置する地理的条件も強みです。EC、貿易、物流の拠点として、シンガポールは東南アジア市場への入り口となる存在です。加えて、規制が少なく、意思決定や事業展開のスピード感を求める中小企業にとって「チャレンジできる器」としての人気も高まっています。
2. シンガポール法人の設立条件とフロー
シンガポールでの法人設立は、最短で1週間程度と非常にスピーディーに進められます。必要な要件は以下の通りです。
・取締役:最低1名。そのうち1名はシンガポール居住者である必要があります。
・登記用住所:シンガポール国内の住所。バーチャルオフィスも利用可能です。
・会社秘書役(コーポレート・セクレタリー):設立後6ヶ月以内に契約が必須です。
・資本金:最低1SGDから可能ですが、実務的には数万SGD以上が望まれます。
【シンガポール法人設立のフロー】
1. 会社名の予約(ACRAへの申請、1営業日程度)
2. 事業内容の登録(SSICコードを選択)
3. 法人登記申請(BizFile+からオンライン申請、1〜3営業日で承認)
4. 設立完了通知の発行(UEN=法人番号が付与される)
5. 銀行口座開設(対面面談 or オンライン審査)
6. 資本金入金・事業開始(必要に応じライセンス取得)
このように、設立そのものは比較的迅速に行えますが、銀行口座開設や居住取締役確保で時間を要する場合があります。設立手続きは、日本に居住しながらも代行会社を通じて行うことができます。特に信頼できる日系代行会社を利用すれば、英語力に不安がある場合でも安心して進められるのが現実です。
3. シンガポール法人の活用パターン
シンガポール法人は、単なる登記上の存在ではなく、事業や資産を運営するための「器」として多様な役割を果たすことができます。実務上、特に次のような活用方法が目立ちます。
3-1. 海外EC拠点としての活用
AmazonやShopifyといったプラットフォームを利用し、アジア市場へ進出する際の拠点として最適です。シンガポールは物流網が整っており、ASEAN諸国への配送も容易であるため、越境EC事業のハブとして活用する企業が増えています。特に東南アジア市場は人口増加と中間層拡大が著しいことから、法人設立による現地拠点化は成長戦略に直結します。
3-2. 節税・利益移転の拠点
シンガポール法人を「再投資用のプール法人」として設立し、利益を集約して柔軟に資金を再配分するケースも多く見られます。法人税率の低さや資金移動の自由度を活かし、日本や他国の法人との間でキャッシュフローを設計することで、資金効率を高めながら税務リスクを抑えることが可能です。
3-3. 採用・外注拠点としての活用
人材コストの高い日本から一歩外に出ることで、東南アジア各国の優秀な人材を確保したり、オフショア外注を活用したりすることが容易になります。シンガポールは国際的な人材が集まる都市であり、周辺国とのアクセスも良好なため、採用・外注のハブ拠点として非常に有効です。結果として、業務効率化やコスト削減につながる点が魅力です。
3-4. 資産管理会社としての活用
経営者や投資家が個人資産を分散させたり、事業承継のための受け皿として利用するケースもあります。シンガポールは信頼性の高い金融・法制度を持つため、資産保全の観点からも安心して活用できる拠点です。特に国際的に資産を持つ経営者にとっては、相続や承継のステージを見据えた「資産管理会社」としての活用が現実的です。
シンガポール法人の柔軟性は、事業展開と資産戦略の両方に応用可能であることが特徴です。
4. シンガポール法人のリスクと注意すべきポイン
4-1. CFC税制(タックスヘイブン対策)
日本の居住者が保有するシンガポール法人の実効税率が20%未満で、かつ実態が伴わない場合、日本で合算課税されるリスクがあります。シンガポールの表面税率は17%ですが、中小企業控除により20%を下回ることがあるため、実態を伴った事業運営が不可欠です。
4-2. PE認定(恒久的施設)
「業務の実態が日本にしかない」と判断されると、日本の課税対象となる可能性があります。取引や活動の一部を必ずシンガポールで行うなど、PE認定を回避する工夫が必要です。
4-3. 移転価格税制
関連会社間での取引価格が不適正だと、税務当局から否認されるリスクがあります。契約書の整備や、簡易的なローカルファイルの作成などにより、適正性を担保することが重要です。
4-4. 銀行口座の開設
法人設立は簡単でも、銀行口座開設は難易度が高まっています。近年は実体のない法人への口座開設は厳格化されており、事業計画や売上実績の提示が求められます。初期はWiseなどのデジタル口座を活用し、実績が整った段階で大手銀行口座を開設する流れが現実的です。
4-5. 外貨管理・為替リスク
シンガポールドルや米ドルを保有することで、為替変動リスクが発生します。単独での運用ではなく、外貨ポートフォリオの一部として捉えることが望ましいでしょう。
5. まとめ
シンガポール法人設立は、低い法人税率、資金移動の自由度、法制度の透明性、そしてASEANハブという優位性を背景に、多くの経営者や投資家に活用されています。しかし同時に、CFC税制やPE認定、銀行口座開設の厳格化といった課題も存在します。
重要なのは「ルールを知り、適切な設計を行うこと」です。最初の段階で専門家と連携し、実体を伴った法人運営を構築できれば、シンガポール法人は事業と資産戦略の両面で大きな武器となるでしょう。
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