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驚愕の判決!最高裁が否認した不動産による相続対策~国税庁 vs 納税者

本記事では「全面否認された不動産による相続税対策〜財務評価基本通達総則第6項」について解説します。
不動産の相続税評価を路線価方式により算出することにより、相続税評価が圧縮されるため多くの富裕層が不動産により相続対策をしています。この路線価方式による相続税評価を争点に国税庁と納税者との裁判となり、全面否認されました。このニュースは税理士業界をはじめ、不動産業界やコンサルティング業界をざわつかせました。もっとも驚いたのが、国税庁の伝家の宝刀と言われている財務評価基本通達総則第6項を適用したことです。
そもそもの相続税評価の考え方から裁判の争点、判決から考えるこれからの相続税対策について解説します。

1.いまさら聞けない、不動産の相続税評価

相続税の算出のためには被相続人の資産を正しく評価する必要があります。現金や有価証券であれば算出は簡単ですが、不動産は相対取引であることから客観的な評価をすることができません。相続税の評価は相続税法第22条に記されています。相続税法第22条には「当該財産の取得時における時価」で算出をしなさいという内容が書かれています。客観的な評価ができない不動産の時価を算出するにはどうすればいいのでしょうか。相続税法だけではあいまいになってしまうため、国税庁は財産評価基本通達を税務署に通達し、税理士はそれを参考に相続税評価をしているのです。

国税庁のHPでも確認できるように、財産評価基本通達で不動産の時価を算出するには、「路線価方式」か「倍率方式」を用いることが書かれています。

路線価方式:国税庁が発表している路線価×補正率×面積
倍率方式:固定資産税評価額×国税庁が発表している倍率
国税庁HP

「路線価方式」を用いて相続税評価をするのが一般的になっています。

2.「路線価方式」による不動産の相続税評価が否認された裁判の争点

今回国税庁と納税者とで「路線価方式」による不動産の相続税評価を争点に裁判で争われました。被相続人は90歳でマンションを購入することで相続税評価を圧縮しました。2009年1月30日に荻窪に8.4億円の一棟マンションを購入、次いで2009年12月25日に川崎の一棟マンションを5.2億円で購入します。それぞれ荻窪の一棟マンションでは6.3億円の不動産ローン、川崎の一棟マンションでは4.2億円の不動産ローンを借りていました。
2013年にお亡くなりになり相続となったわけですが、これらの不動産の評価を国税庁の財務評価基本通達に則り「路線価方式」で算出した結果、荻窪の一棟マンションの評価が2億円、川崎の一棟マンションの評価が1.3億円となりました。それぞれに不動産ローンがあるため、不動産の相続税評価は▲7.3億円になります。まとめると不動産の購入価格は13.6億円、不動産ローンは10.6億円、相続税評価は3.3億円、結果相続税評価が▲7.3億円となるのです。その他の資産が7.5億円あったため、合算すると2,000万円が相続税評価となり、基礎控除や配偶者控除により相続税の納税額は0円と申告されました。

これに待ったをかけたのが国税庁です。納税者の主張は当たり前で、国税庁が通達している財務評価基本通達の「路線価方式」に則り、相続税評価をしているわけなので相続税の申告は問題ないと思ってしまいます。
実は国税庁の財産評価基本通達の第6項には、「著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と書かれています。つまり、国税庁が不適当と認めれば国税庁長官の指示を受けて、財産評価基本通達に則っていた場合でも相続税評価をし直すということです。これまで財産評価基本通達第6項が適用されたことはありません。今回の裁判の最大の見どころは、国税庁が史上初の財産評価基本通達第6項を適用するか否かだったのです。

国税庁は不動産鑑定評価で相続税評価の時価を算出しました。不動産鑑定評価では12.7億円の評価となり、2.9億円の相続税の納税を求めたのです。財産評価基本通達の「路線価方式」での相続税評価を主張して相続税の納税額0円を主張する納税者と財産評価基本通達第6項を適用し、不動産鑑定評価での相続税評価を主張して2.9億円の納税を求める国税庁との真向勝負です。この裁判は東京地方裁判所、東京高等裁判所、最高裁判所まで争われました。最高裁判所の判決が下るまでに3回も弁論をしました。最高裁判所が弁論をする場合、地方裁判所や高等裁判所の判決が覆るという期待もあり、弁論や判決に注目が集まりました。いずれの裁判所での裁判でも国税庁の勝訴、納税者は全面敗訴してしまいました。

3.最高裁判所の判決のポイント

最高裁判所の判例はこれからの相続税評価に大きな影響を与えます。そのため、今回の判決のポイントを理解し、今後の相続税対策に活かさなければなりません。最高裁判所の判決のポイントを解説します。

3-1.相続税法>財産評価基本通達

最高裁判所はあくまでも法令に従いなさい、という判決を下しました。通達は税務署職員が現場で参考とするものであるに過ぎず、法令である相続税法を遵守するべきとの考えを示しました。

3-2.客観的な交換価値の算出

財産評価基本通達には「路線価方式」と「倍率方式」により相続評価をするように指導していますが、相続税法に記されている通り、相続税の評価は客観的な交換価値により算出されるべきという考えを示しました。

3-3.悪意のある悪質な税務申告

今回の相続対策が悪意があり、悪質な税務申告であったという考えを示しました。不動産の相続評価により相続税の納税額がなくなるというのは、税金の公平性に欠くことだという考えです。

4.最高裁判所の判決から考えるこれからの不動産による相続対策

これからの不動産による相続対策で気を付けなければならないことを、最高裁判所の判決を紐解いて考えてみましょう。

4-1.不動産購入に大義があったか

高齢にも関わらずわざわざ荻窪や川崎に一棟マンションを買う必要があったのか、ということが問われます。その他に不動産賃貸管理を営んでいるか、いままで不動産の賃貸管理をしたことがあるのか、何の経験もない素人である被相続人が不動産を購入し、賃貸管理をする大義を問われます。
今回のケースは不動産仲介、不動産賃貸管理を営む法人の代表であったため、大義はあったのでしょう。

4-2.不動産購入の目的は何か

不動産購入の目的があからさまに相続税対策だったのではないか、ということが問われます。老後の資産形成のために不動産投資をするのであれば問題ありませんが、高齢であればあるほど目先に起こる相続の対策のためと認識されてもおかしくはありません。
今回のケースは、不動産ローンを貸した信託銀行の稟議書に相続対策のため、と書かれており、証拠として提出されています。

4-3.相続発生後の不動産の取扱い

相続後も不動産賃貸管理を継続しているか、あからさまな相続対策だったのではないか、ということが問われます。継続するのであれば、相続が発生しても不動産賃貸管理を継続するはずです。
今回のケースは、2013年3月に相続が発生した後、2013年6月に川崎に一棟マンションが売却されています。

5.まとめ

最高裁判所の判決はこれからの不動産による相続対策に大きな影響を与えます。とはいえ、不動産の評価は難しいため客観的な交換価値=時価の算出は難しいでしょう。難しいが故に国税庁も財産評価基本通達を通達しているのです。
そもそも日本の不動産の取引価格は正確に把握できません。これは国土交通省でも国税庁でも一緒です。不動産鑑定士が不動産鑑定をしてもその不動産価格が正しいとは限らないのです。日本の不動産情報は閉鎖的で、取引に透明性も公平性もありません。もっとも問題と感じるのが、閉鎖的な不動産情報や不動産取引にあります。

今回の裁判で国税庁が敗訴すれば、相続税評価の方法が見直されていたはずです。財産評価基本通達第6項の適用で幕を閉じたこの裁判では客観的な不動産の評価がうやむやになってしまいました。財産評価基本通達第6項の適用は、国税庁が気に入らなければ覆すことができると証明されました。税理士をはじめ、相続コンサルティングや不動産会社も相続税対策の提案に怖気づいてしまうでしょう。

いままでの相続対策は不動産に限らず、相続資産を圧縮するのが目的でした。今回の最高裁判所の判決では相続資産を圧縮すると否認の可能性があることを証明しました。これからの相続対策はしっかり資産を増やして相続税の納税額を確保することをオススメします。これからは資産形成が鍵を握るでしょう。

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