海外での資産形成を検討すると、「海外積立」や「オフショア投資」という言葉を耳にすることがあります。特に海外IFAを通じて案内されることが多いのが、海外の金融機関や保険会社、投資会社などが提供する長期積立型の商品です。
代表的な事業者として、Dominion Capital Strategies、RL360、Investors Trustなどがあります。ただし、海外積立は単純に「どの会社が一番よいか」だけで判断できる商品ではありません。
商品提供会社だけでなく、投資期間、手数料、途中解約や引出しの条件、投資対象、IFAのサポート体制、そして投資家が居住する国の金融規制や税制まで確認する必要があります。
特に日本居住者については、2026年5月に日本の金融当局がRL360 Insurance Company Limitedに対して、無登録で金融商品取引業を行っていたとして警告を行いました。海外積立商品を取り巻く環境は以前とは変化しており、「海外の商品だから自由に購入できる」と考えるのは適切ではありません。
本記事では、海外積立の基本的な仕組みを整理したうえで、Dominion、RL360、Investors Trustの特徴と注意点を比較します。
海外積立投資とは?
海外積立とは、海外の金融機関や保険会社、投資会社などが提供する商品を利用し、毎月など一定の頻度で資金を拠出しながら、中長期的な資産形成を行う方法です。
日本の投資信託の積立やiDeCoなどと「定期的に投資する」という点では似ていますが、商品によっては契約期間が10年、15年、20年以上と長く設定され、途中解約時に大きなコストが発生する場合があります。
また、海外積立では複数通貨を選択できたり、海外の多数のファンドへアクセスできたりする商品もあります。この点は、複数の国で生活する人や、将来的な海外移住、子どもの海外教育、外貨での資産形成などを考えている人にとってメリットとなる可能性があります。
一方で、「海外だから税金がかからない」「タックスヘイブンの商品だから非課税」と考えるのは誤りです。
商品の提供会社がGuernsey、Isle of Man、Cayman Islandsなどに所在していたとしても、商品提供会社側の税制と、投資家本人に対する課税は別の問題です。日本居住者であれば、日本の税法に基づく所得税や申告義務などを別途確認する必要があります。
海外IFAとは?
海外積立では、商品提供会社から直接購入するのではなく、IFA(Independent Financial Advisor)を通じて契約するケースが多くあります。
IFAとはIndependent Financial Advisorの略称で、特定の金融機関だけに依存せず、顧客の資産形成について金融商品や運用方法などのアドバイスを行う専門家を指します。
ここで注意したいのは、日本で一般的に使われる「IFA」と、海外金融商品を紹介する海外IFAが必ずしも同じ制度ではないことです。
IFAのライセンスや規制は国・地域によって異なります。そのため海外積立では、商品そのものだけでなく、「誰から契約するのか」も重要です。
同じ商品であっても、IFAが設定するAdviser Feeや運用サポートの内容によって、実際のコストやサービス内容が変わる可能性があります。
Dominion Capital Strategiesの特徴
Dominion Capital Strategiesは、Guernseyを拠点とする国際的な金融サービス会社です。Dominion Capital Strategies LimitedはGuernsey Financial Services Commission(GFSC)の規制・ライセンスを受けています。
2004年に設立され、長期的な資産形成を目的とした積立プログラムや投資ソリューションを提供しています。
Dominionの特徴は、長期積立だけに固定されるのではなく、複数の運用Strategyやファンドを利用しながら資産形成を行える点にあります。
Savings Strategyでは月額USD250から積立を始めることができ、複数通貨や350以上のファンドへのアクセスなど、国際的な分散投資を行うための選択肢が用意されています。
また、積立額の変更や一時停止、一部引出し、解約などにも一定の条件のもとで対応しています。
ただし、「いつでも自由に解約して元本が戻る」という意味ではありません。早期Redemptionを行った場合には、投資した総額を下回る可能性があります。
Dominionで注意したいReverse Solicitation
Dominionについて確認しておきたいのが、Reverse Solicitationです。
Dominionは商品・サービスについて、Independent Financial Advisersを通じ、Reverse Solicitation Basisで提供するとしています。
Reverse Solicitationとは、一般的には金融会社やアドバイザー側から積極的に勧誘するのではなく、顧客側から自発的にサービスを求めたことを前提として取引する考え方です。
したがって日本居住者がDominionを検討する場合にも、「日本人なら誰でもIFAから勧誘を受けて契約できる」と単純に考えるのではなく、居住国の金融規制や最新の受付条件を確認する必要があります。
RL360の特徴と日本居住者が注意すべき点
RL360はIsle of Man(マン島)を拠点とする国際的な金融サービス会社です。現在はInternational Financial Group Limited(IFGL)傘下で、Isle of Man Financial Services Authority(FSA)の規制下で事業を行っています。
現在のRL360につながる前身会社は1990年代に設立され、2008年にRoyal London 360°として統合、2013年のManagement Buyoutを経て現在の体制となっています。

代表的な商品であるRegular Savings Plan(RSP)は、中長期で積立投資を行うための商品です。
International向けRSPでは月額USD280から積立可能で、最低積立期間は5年。7通貨に対応し、350を超えるファンドから投資先を選択できます。
積立額の変更、Payment Holiday、ファンド変更、追加拠出などにも一定の条件のもとで対応しているため、長期積立商品として一定の柔軟性があります。
2026年5月、日本の金融当局がRL360へ警告
日本居住者については、2026年に大きな環境変化がありました。
2026年5月15日、日本の金融当局はRL360 Insurance Company Limitedについて、無登録で金融商品取引業を行っていたとして警告を行いました。
RL360のRegular Savings Plan等について、日本国内居住者から拠出された資金を主として有価証券等へ投資運用する仕組みであり、日本の金融商品取引法上必要となる登録をRL360が受けていないことが問題とされています。
その後、IFA業界では2026年6月1日以降、日本居住者向け新規契約の受付が停止されたとの情報があります。
一方、RL360公式の一般向けページでは、日本居住者向け新規受付停止について明示した一般向け告知までは確認できません。
したがって、日本居住者がRL360を新規契約できるかについては、RL360および適切な資格を持つIFAへ最新の受付状況を確認する必要があります。
なお、新規契約の受付と既存契約の継続は別の問題です。すでにRL360を保有している場合には、自身の契約内容やIFAを通じて今後の取扱いを個別に確認してください。
マン島の「最大90%補償」は元本保証ではない
RL360について、「マン島だから資産の90%が保証される」と説明されることがありますが、正確に理解する必要があります。
RL360はIsle of ManのPolicyholders’ Compensation Schemeの対象となっており、RL360自体が債務を履行できなくなった場合、制度の条件に従って契約上の負債額の最大90%相当が補償対象となります。
しかし、これは投資したファンドの価格が下落した場合に、その損失の90%を補填する制度ではありません。
したがって、「RL360なら投資元本の90%が保証される」という説明は正確ではありません。
Investors Trustの特徴
Investors Trustは2002年に設立された、Cayman Islandsを拠点とする国際的な金融サービス会社です。
インデックス連動型商品や長期積立商品などを提供しており、日本人投資家の間ではPrincipal Protectionの仕組みを備えた商品があることで知られています。

代表的な商品のひとつが、S&P 500 Index Principal Protected Planです。
この商品はS&P 500指数に連動する運用を行いながら、一定の条件を満たして満期まで契約を継続した場合にPrincipal Protectionが設定されています。
10年、15年、20年のプランがあり、最低拠出額は年間USD2,400です。
満期時のPrincipal Protectionは、10年プランで拠出元本の100%、15年プランで140%、20年プランで160%とされています。
Investors Trustの「元本保証」には条件がある
Principal Protectionが設定されていることから「元本保証型の海外積立」と紹介されることがありますが、無条件に元本が保証される商品ではありません。
Principal Protectionを受けるためには、契約期間中に必要な拠出を行い、満期まで所定の条件を満たす必要があります。
また、一部引出しなどを行った場合にはPrincipal Protectionが失われる場合があります。
さらにPrincipal ProtectionはStructured Notesなどを利用して構築されており、発行金融機関等の信用リスクも存在します。
したがって、正確には「所定の条件を満たして満期まで継続した場合にPrincipal Protectionが設定されている商品がある」と理解するべきです。
手数料も含めて判断する
S&P 500 Index Principal Protected Planでは、契約期間に応じた年間管理手数料に加えて、Policy Fee、Structure Feeなどが設定されています。
そのため、「S&P 500に連動するならETF(Exchange Traded Funds)を自分で購入するのと同じ」と考えるべきではありません。
ETFへの直接投資とは異なり、Principal Protection、長期積立機能、契約管理などを組み合わせた商品です。その仕組みとコストの両方を理解したうえで判断する必要があります。
Dominion・RL360・Investors Trustを比較
3社にはそれぞれ異なる特徴があります。重要なのは「どの会社が一番優れているか」ではなく、自分の資産形成の目的や投資期間、流動性の必要性に商品設計が合っているかです。

| 比較項目 | Dominion | RL360 | Investors Trust |
|---|---|---|---|
| 拠点 | Guernsey | Isle of Man | Cayman Islands |
| 主な積立商品 | Savings Strategy | Regular Savings Plan | S&P 500 Index Principal Protected Plan等 |
| 最低拠出額の例 | 月USD250〜 | 月USD280〜 | 年USD2,400〜 |
| 投資先 | 350以上のファンド等 | 350超のファンド | インデックス連動型商品等 |
| 契約期間 | 商品・Strategyによる | 5年以上 | 10年・15年・20年等 |
| 途中引出し・解約 | 一定条件で可能 | 一定条件で可能 | 商品によって制限が大きい |
| 特徴 | 運用選択肢と柔軟性 | 豊富なファンド・複数通貨 | Principal Protection商品 |
| 日本居住者 | Reverse Solicitation等の条件を確認 | 2026年の金融当局警告を踏まえ最新受付状況の確認必須 | 最新受付状況をIFAへ確認 |
| 主な注意点 | 解約条件・IFA・手数料 | 日本での新規受付・長期契約・手数料 | Principal Protectionの条件・手数料・流動性 |
※上記は2026年時点の各社公式サイト・公表資料・日本の金融当局等の情報をもとに整理しています。商品内容、手数料、受付条件等は変更される可能性があるため、契約前に必ず各社および適切な資格を持つIFAへ最新情報をご確認ください。
海外積立で重要なのは「途中でやめない設計」
海外積立を検討するとき、多くの人が期待リターンや過去の運用実績を最初に見ます。しかし、実際にはそれ以上に重要なのが、契約期間と流動性です。
例えば20年間積み立てる商品を契約しても、5年後に住宅購入や教育費、事業資金などで現金が必要になれば、途中解約や一部引出しを行う可能性があります。
その結果、解約手数料が発生したり、Principal ProtectionやBonusなどの条件を満たせなくなったりすれば、想定していた投資成果を得られない可能性があります。
したがって海外積立では、「月々いくら払えるか」だけではなく、「その金額を10年、15年、20年と無理なく継続できるか」から逆算して契約することが重要です。
また、すべての資産を海外積立へ入れる必要もありません。現金、株式、ETF、不動産、年金、保険などを組み合わせ、海外積立には長期間使用する予定のない資金を配分するという考え方もあります。
海外積立は商品だけでなくIFAも確認する
海外積立では、商品提供会社の信用力や運用実績だけを確認しても十分ではありません。
IFAがどこの国・地域でどのようなライセンスや規制のもとで活動しているのか、どのような手数料を受け取るのか、契約後にどのようなサポートを行うのかまで確認することが重要です。
また、海外金融取引では本人確認や資金源確認など、AML(Anti Money Laundering)の観点から各種書類の提出を求められることがあります。
「海外IFAだから安心」「海外金融機関だから安全」と考えるのではなく、商品提供会社・商品・IFA・居住国の規制を一体として確認することが海外積立では重要です。
まとめ|海外積立は商品より「仕組み」を理解して選ぶ
海外積立には、外貨で長期的な資産形成を行ったり、海外の幅広いファンドへアクセスしたりできるという特徴があります。
一方、長期契約特有の手数料や解約条件があり、日本国内の投資信託やETFとは商品構造が大きく異なります。
さらに2026年にはRL360に対して日本の金融当局が警告を行うなど、日本居住者が海外積立を利用する際の規制環境も変化しています。
そのため、単純に「Dominionは安い」「RL360は老舗」「Investors Trustは元本保証」といったイメージだけで商品を選ぶべきではありません。
商品提供会社、商品内容、手数料、契約期間、途中解約条件、IFA、居住国の規制・税務まで含めて判断することが重要です。
また、すでに海外積立を保有している場合も、「手数料が高そうだから解約する」と短絡的に判断するのではなく、現在の解約返戻価値、残存契約期間、今後の手数料、IFA変更の可否などを確認したうえで判断することをおすすめします。
Credi Techでは、特定の海外積立商品を一方的に推奨するのではなく、海外不動産を含む海外資産全体の中で、現在の保有商品や資産配分を整理するという視点からご相談を受けています。
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