保有・資産管理 米国不動産投資

売れない「負動産」になったテキサス不動産|日本人オーナーのトラブルと立て直し

日本人投資家の間で一大ブームとなったTexas不動産。

人口増加や企業進出に加え、日本での税務メリットを背景として、多くの日本人投資家がDallasを中心とするTexas不動産を購入しました。

Texasそのものが衰退したわけではありません。現在も人口流入や企業進出が続き、Dallas-Fort Worthをはじめとする都市圏は成長しています。

しかし、「Texasが成長していること」と「日本人が購入した個別物件の価値が上がっていること」は別問題です。

Credi Techが実際に管理や相談を受けてきたTexas不動産の中には、サブリース契約の変更・解除、HOAの資金不足、修繕の長期化、管理会社とのコミュニケーション不足など、複数の問題を抱えている物件があります。

購入時には「安定収入が期待できるアメリカ不動産」だったものが、数年後には売りたくても希望価格で売れない「負動産」になってしまうケースもあります。

なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。

本記事では、Credi Techが実際に見てきたTexas不動産のトラブルをもとに、問題が発生した背景と、購入後の管理で何が重要なのかを解説します。

Texas不動産市場そのものの変化については、以下の記事で詳しく解説しています。

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なぜ日本人が購入したTexas不動産でトラブルが起きたのか

節税ニーズから広がったCondo Conversion

日本人投資家向けに販売されたTexas不動産の中には、もともと一棟のApartmentとして所有・運営されていた築古物件を取得し、Condo Conversion(コンドコンバージョン)によって区分所有化したものがあります。

一棟の物件を複数のUnitに分けることで、1人の投資家が一棟すべてを購入する必要がなくなり、日本人投資家が比較的少ない自己資金からアメリカ不動産へ投資できる商品として販売されました。

さらに、日本の金融機関等による融資、サブリース、AM、PMなどを組み合わせることで、海外不動産を直接運営するというよりも、一定の収益を期待する金融商品に近い感覚で購入した投資家も少なくありませんでした。

以下は、当時日本人投資家向けに販売されたTexas不動産のスキームの一例を簡略化したものです。

※実際の案件をもとに仕組みを簡略化した模式図です。すべてのTexas不動産や販売会社が同様の仕組みを採用しているわけではありません。

サブリースによって「実際の収益」が見えにくくなった

このスキームの大きな特徴のひとつが、Sublease(サブリース)です。

サブリース期間中はMaster LesseeからOwnerへ一定の賃料が支払われるため、空室が発生していてもOwnerの収入には直接反映されない場合があります。そのため、Ownerから見ると安定した不動産投資に見えます。

一方で、実際にTenantがいくらのRentを支払っているのか、Vacancyがどの程度発生しているのか、物件運営にどの程度のRepair Costが必要なのかなど、物件本来の収益力がOwnerから見えにくくなるという問題があります。

契約条件の変更やサブリース解除で問題が表面化する

日本の不動産投資でも問題になることがありますが、サブリースは契約期間中ずっと同じ条件が保証されるとは限りません。契約内容によっては途中で条件が変更されたり、Ownerへ支払われる賃料が引き下げられたりする可能性があります。

また、実際にCredi Techが見てきた案件では、3~5年程度でサブリースが解除されるケースもありました。

サブリースが解除されると、それまでMaster Lesseeが吸収していたVacancy、Market Rent、Repair Cost、Management CostなどがOwnerの収支へ直接反映されます。

そこで初めて、「自分が所有している物件には本当はどの程度の収益力があるのか」が見えてくるのです。

重要なのは、サブリース中に受け取っている配当賃料と、物件本来の収益力は必ずしも一致しないということです。

HOAの資金不足が物件全体を劣化させる

自分のUnitだけ修繕しても資産価値は守れない

Condo Conversionされた不動産では、Unit内部などの専有部分と、建物全体の共用部分で管理主体が異なります。

専有部分についてはOwnerが管理しますが、Roof、Exterior、Parking、Common Area、Landscapingなどの共用部分は、原則としてHOA(Homeowners Association)が管理します。

そのため、自分が所有するUnitの内装をきれいにしても、RoofやExterior、Parkingなど建物全体が劣化していれば、物件全体としての競争力や資産価値を維持することはできません。

Reserve不足からSpecial Assessmentへ

HOAはOwnerからHOA Feeを徴収し、日常的な管理費用だけでなく、将来必要となる大規模修繕に備えてReserveを確保していく必要があります。

ところが、HOA Feeが実際の維持管理コストに対して十分でなかったり、長期修繕計画が適切に作られていなかったりすると、Reserveが不足します。

Reserveが不足すると必要なRepairが先送りされ、建物の劣化がさらに進みます。そして最終的に大規模修繕が必要になった段階で、OwnerにSpecial Assessment(追加負担)が課されることがあります。

ここでOwnerが追加負担を嫌って修繕を先送りすると、さらに建物が劣化するという悪循環に陥ります。

自分のUnitだけをきれいにしても、Building全体の価値を守ることはできません。

HOAの仕組みやReserve、Special Assessmentについては、以下の記事で詳しく解説しています。

アメリカ不動産のHOAとは?費用・修繕積立金・Special Assessment・トラブル対策を解説アメリカ不動産のHOAとは?日本のマンション管理組合との違い、HOA Fee、修繕積立金(Reserve)、Specia…

売却するときに初めてHOAの問題が表面化する

HOAの問題が特に大きく表面化するのが、物件を売却するときです。

TexasのCondominiumでは、売却時のResale Certificateなどを通じて、Associationの財務状況、Reserve、Assessment、Insurance、Litigationなどが買主・Lender・Title Insurance会社等の確認対象になることがあります。

Owner自身が物件購入後にHOAの財務状況を十分確認していなければ、売却を検討して初めて「Reserveがほとんどない」「大規模修繕が必要になっている」といった問題を認識することもあります。

その結果、売却価格の交渉材料になったり、Financingを含めて取引条件が厳しくなったりする可能性があります。

動画で見る|HOAに問題を抱えたTexas不動産

以下は、実際に当時のTexas不動産の状況を撮影した動画です。現地でどのような問題が起きていたのかを確認できます。

なぜリノベーション・大規模修繕が終わらないのか

アメリカの工事はProject Managementが重要

日本人投資家向けに販売されたTexas不動産の中には、築古物件をRenovationすることで物件価値を高め、将来のCapital Gainを狙う商品もありました。

しかし、アメリカの修繕工事では、工事開始後に想定していなかった問題が見つかり、Change Orderによる追加費用や工期変更が発生することがあります。

重要なのは「アメリカだから工期が守られない」と考えることではありません。Estimateの取得、Contractorの選定、発注、工事進捗、Change Order、Inspection、Completionまでを継続して管理する必要があります。

追加費用を負担しなければ工事が止まることもある

築古物件では、工事を始めてから想定外の劣化や設備の問題が見つかることがあります。

当然、当初予算を超える工事が必要になれば追加資金が必要です。しかし、日本人Ownerが追加負担を拒否した場合、必要なRepairを実施できず、工事が長期間停止してしまうことがあります。

追加費用を支払わなかったからコストを削減できたのではなく、必要な修繕を行わなかった結果として資産価値を毀損してしまうケースがあるという点には注意が必要です。

Master Lesseeが長期的な修繕を積極的に行わないケース

サブリース期間中はMaster Lesseeが物件を借り上げて運営しますが、Master LesseeとOwnerでは、長期的な資産価値に対する利害が完全には一致しない場合があります。

特にサブリース契約の終了が見えている状況では、多額の費用をかけて大規模修繕を実施しても、その投資効果をMaster Lessee自身が長期的に享受できない可能性があります。

その結果、必要最低限のRepairだけが行われ、建物全体の価値を維持するためのCapital Improvementが先送りされるケースもあります。

サブリース契約そのものが問題なのではありません。重要なのは、「誰が長期的なAsset Valueを管理するのか」を明確にしておくことです。

Lienは売却時の重大な障害になる

Contractorなどへの未払いが発生した場合、一定の法的要件を満たせば物件にLien(リーン)が記録される可能性があります。

Lienが存在するとTitle上の問題となり、売却やRefinanceのClosingに大きな支障を生じさせる可能性があります。

旧記事では「Lienが設定されると売却できない」と説明していましたが、より正確には、売却等を進めるうえで解消・処理が必要となる重大な問題と考えるべきです。

動画で見る|修繕が進まないTexas不動産

以下も当時の現地状況を撮影した動画です。築古物件のRepairやRenovationが進まないことで、物件がどのような状態になるのかを確認できます。

問題を深刻化させるのは購入後の管理体制

PMだけではAsset Valueまで管理できない

アメリカ不動産では、PM(Property Management)がTenant対応、Rent Collection、日常的なRepairなどを担当します。

しかし、HOAの財務状態は健全なのか、大規模修繕に資金を投入すべきなのか、現在のRentはMarket Rentと比較して適正なのか、保有を継続するのか売却するのかといった判断は、PMの日常管理とは異なる領域です。

そこで必要になるのが、AM(Asset Management)です。

PMが「物件を管理する」役割だとすれば、AMは「OwnerのAssetを管理する」役割です。

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日本からTexasの物件を直接管理するのは簡単ではない

海外OwnerがTexasの物件を保有する場合、PMだけでなく、HOA、Vendor、Contractor、Insurance会社、Brokerなど複数の関係者と連携する必要があります。

「PMから返事が来ない」「Vendorから工事写真が届かない」「工事の進捗が分からない」「HOAから資料が届かない」といった問題が発生したとき、日本からメールを送り、返事を待っているだけでは解決しないこともあります。

特に修繕や大規模工事では、Estimateを取得して終わりではありません。発注後の進捗、追加工事、支払い、完成確認まで継続して追う必要があります。

AMの仕事は「誰の責任か」を決めることではない

旧記事では、Texas不動産で発生したトラブルについて「すべてAM会社の責任」と説明していました。しかし、実際の不動産運営では、Owner、HOA、PM、Developer、Contractor、Insurance会社など複数の関係者が関与します。

原因もひとつとは限りません。

AMの役割は、問題を誰かの責任にすることではなく、問題を把握し、Ownerに選択肢を提示し、解決まで追うことです。

売れない「負動産」にしてしまわないために

Texas不動産が「負動産」になる原因はひとつではありません。

サブリース、HOA、Repair・Renovation、管理体制、そしてMarket環境。複数の問題が重なることで、Rentの低下、Vacancyの上昇、Repair Costの増加などが発生し、最終的にNOI(Net Operating Income)とAsset Valueを押し下げます。

まず現在の物件状況を把握する

問題を抱えている物件を立て直すために、最初に行うべきことは売却でも大規模修繕でもありません。

まず現在地を把握することです。

  • 購入価格
  • 現在のMarket Value
  • 現在のRentとMarket Rent
  • Occupancy・Vacancy
  • NOI
  • HOAの財務状況とReserve
  • Special Assessmentの有無
  • Repair・Renovation履歴
  • Property Tax
  • Insurance
  • Lienの有無
  • 現在のPM・AM体制
  • 想定売却価格

これらを整理することで、「物件そのものに問題があるのか」「HOAなのか」「管理なのか」「Marketなのか」が見えてきます。

管理移管・修繕・売却のどれが正しいかは物件によって違う

問題が見つかったからといって、すべての物件をすぐに売却する必要があるわけではありません。

PMやAMを変更することで改善できる物件もあれば、RepairやCapital Improvementによって競争力を回復できる物件もあります。一方で、追加投資をせずに売却した方が合理的なケースもあります。

重要なのは「Texasだから持ち続ける」「問題があるから売る」と一律に判断するのではなく、現在のAsset Valueと収益力を確認して判断することです。

節税目的で購入したアメリカ不動産を今後「保有するのか・管理を立て直すのか・売却するのか」という判断については、別記事で詳しく解説します。

まとめ|Texasが成長しても、すべての物件価値が上がるわけではない

Texasそのものが悪い不動産市場になったわけではありません。

問題になっているのは、数年前に購入した物件を、購入当時と同じ前提のまま保有し続けていることです。

サブリースの解除、HOAの資金不足、建物の老朽化、修繕の遅延、管理体制、新築・改修済み物件との競争。こうした問題を放置すれば、購入時には魅力的だった不動産が、売りたくても希望価格で売れない「負動産」になってしまう可能性があります。

しかし、問題を正しく把握すれば、すべての物件が「売るしかない」わけでもありません。

修繕するのか、管理会社を変更するのか、大規模修繕を行うのか、保有を続けるのか、売却するのか。

重要なのは、現在の物件価値と収益力を把握したうえで、もう一度「Asset」として評価することです。

他社で購入したTexas不動産の管理移管もご相談ください

Credi Techでは、他社で購入したTexas不動産についても、管理移管・Asset Managementのご相談を受け付けています。

「現在の管理状況が分からない」「HOAに問題を抱えている」「修繕すべきか売却すべきか判断できない」「現在のAM・PM会社を変更したい」といった場合には、まず現在の物件状況を整理するところから対応します。

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