日本を代表する不動産会社やハウスメーカーが、米国不動産への投資を拡大しています。住友林業、大和ハウス、積水ハウス、三井不動産、三菱地所、東急不動産、野村不動産。投資対象は戸建住宅だけでなく、賃貸住宅、オフィス、物流施設、データセンターなどへ広がっています。
なぜ、日本の不動産を知り尽くしている大手企業が、わざわざ米国へ巨額の資本を投じるのでしょうか。本記事では各社の米国戦略を追いながら、「なぜ米国なのか」「なぜ特定の都市へ投資が集中するのか」を考え、個人資産・法人資産で米国不動産を保有する意味まで掘り下げます。
日本の大手企業が米国不動産へ巨額の資本を投じている
日本企業による米国不動産投資は、一時的なブームという規模ではなくなっています。特に注目したいのは、完成した不動産を単純に購入しているだけではなく、現地住宅会社の買収、土地取得、住宅開発、賃貸住宅、物流、オフィスなど、米国内に事業基盤そのものを構築する動きが進んでいることです。
住友林業|約45億ドルで米住宅大手を買収
象徴的なのが住友林業です。同社は米国で戸建住宅事業を積極的に展開してきましたが、さらに米住宅会社Tri Pointe Homesの買収を発表しました。買収規模は約45億ドルです。
すでに2025年の米国住宅引渡戸数は1万戸を超えており、2030年には米国で年間2万3,000戸規模を目指しています。日本のハウスメーカーが「海外にも少し進出している」というレベルではなく、米国住宅市場を将来の主力市場の一つとして捉えていることが分かります。
大和ハウス|成長市場を中心に住宅事業を拡大
大和ハウスも米国住宅事業を大きく拡大しています。Stanley Martin、Trumark Homes、CastleRock Communitiesなどの現地住宅会社を傘下に収めながら事業エリアを広げ、米国での戸建住宅供給を増やしています。
特に注目したいのが、人口や雇用の成長が期待される地域を重視していることです。米国であればどこでもいいのではなく、Texasなどを含む成長市場へ資本を振り向けています。
積水ハウス|現地企業を活用し米国で住宅事業を拡大
積水ハウスも米国を重要な成長市場として位置付けています。Woodside Homesなどに加え、M.D.C. Holdingsの買収によって米国住宅事業の規模を大きく拡大しました。
特徴的なのは、日本から住宅を輸出して販売するという発想ではなく、現地企業や現地の人材、土地、販売網を活用しながら、米国市場の中に事業基盤を構築している点です。
三井不動産・三菱地所|住宅だけではない米国投資
米国へ進出しているのはハウスメーカーだけではありません。三井不動産はニューヨークなどの東海岸に加え、人口増加が続くSun Beltの賃貸住宅にも積極的に投資し、住宅だけでなくオフィスや物流などにも投資対象を広げています。
三菱地所も米国で長い事業実績を持ち、Rockefeller Groupを通じてオフィス、物流施設、住宅、データセンターなど幅広い不動産事業を展開しています。つまり、日本の大手企業が見ているのは「アメリカの住宅」だけではなく、米国という巨大な不動産市場そのものなのです。
東急不動産・野村不動産も米国市場へ
東急不動産も米国で長年事業を展開し、賃貸住宅を中心にオフィスや物流施設、データセンターなどへ投資対象を広げています。野村不動産も米国で賃貸住宅開発を進め、Seattle、Dallas、Atlantaなどの成長都市でプロジェクトを展開しています。
ここまで見てくると、特定の一社だけが米国へ賭けているわけではないことが分かります。日本を代表する複数の不動産会社・ハウスメーカーが、それぞれ異なる方法で米国不動産への資本配分を増やしているのです。

なぜ日本の大手企業は米国を選ぶのか?
各社の戦略は異なりますが、共通しているのは「米国だから」という理由だけで投資しているわけではないことです。その背景には、不動産の価値を支える人口、雇用、住宅需要という基本的な要素があります。
人口・世帯数が増える市場が存在する
日本の不動産市場を考えるうえで避けられないのが人口減少です。もちろん東京など人口流入が続く都市もありますが、日本全体では人口減少が進んでいます。
一方、米国では国全体だけを見るのではなく、Texas、Florida、Arizona、Georgia、North Carolina、South Carolinaなど、人口・世帯数が増加している州や都市が存在します。不動産需要の根本にあるのは「そこに住む人がいるか」であり、人が増え、世帯が形成されれば住宅が必要になります。
雇用と企業進出が住宅需要を生む
人口だけではありません。Texasをはじめとする成長州には、テクノロジー、金融、製造、物流、ヘルスケアなどの企業や雇用が集まっています。
企業が進出する → 雇用が生まれる → 人が移住する → 住宅が必要になる。この流れが住宅価格や賃貸需要を支える一つの要因になります。大手企業が米国の中でも成長都市を選ぶ背景には、こうした経済の流れがあります。
住宅供給が需要に追いついていない地域がある
人口や雇用が増加しても、住宅が十分に供給されれば価格や賃料が必ず上昇するわけではありません。重要なのは需要と供給のバランスです。
そのため大手企業は、人口が増えているという理由だけで投資するのではなく、土地供給、住宅在庫、建築許可、賃貸需要などを分析しながら市場を選択しています。米国不動産を見るときに重要なのは「アメリカは人口が増えている」という大きな話ではなく、どの都市で住宅需要と供給のバランスがどうなっているのかを見ることです。
大手企業の投資先を見ると、エリアには明確な偏りがある
7社の投資地域を並べてみると、非常に興味深いことが分かります。全米50州へ均等に投資しているわけではなく、Texas、California、Washington、Florida、Arizona、Georgia、Carolinasなど、特定の州・都市への投資が目立ちます。
TexasをはじめとしたSun Beltへの投資
特に存在感が大きいのがTexasです。Dallas、Fort Worth、Austin、Houston、San Antonioなど複数の大都市圏を持ち、人口・企業進出ともに成長してきた市場です。
またFlorida、Arizona、Georgia、Carolinasなどにも投資が広がっています。一般にSun Beltと呼ばれるこれらの地域には、人口移動や企業進出、住宅需要という共通点があります。
CaliforniaやWashingtonにも資本が向かう
一方、成長市場はSun Beltだけではありません。CaliforniaにはLos Angeles、San Diego、Bay Areaなど巨大な経済圏があり、WashingtonにはSeattleを中心としたテクノロジー産業の集積があります。
住宅価格が高いから投資対象にならない、という単純な話でもありません。所得、雇用、住宅供給、土地の希少性などを総合して市場を見る必要があります。
大手企業の投資エリアとCredi Techのフォローエリアは一部重なる
ここで私たちにとって興味深い点があります。日本の大手不動産会社・ハウスメーカーが投資を拡大しているエリアと、Credi Techが実際に米国不動産の取得・運用・AM(Asset Management)を行ってきたエリアには、一部重なる地域があります。
当社では、Seattle・Bellevue・Tacoma、Los Angeles・Long Beach、San Diego、Dallas、Austinなどを中心に米国不動産をフォローしてきました。大手企業の投資先を見ても、Texas、California、Washingtonなどは複数社が事業を展開している市場です。
もちろん、「大手企業が投資しているから、この地域の不動産なら何を買ってもよい」という意味ではありません。しかし、人口、雇用、住宅需要、流動性などを考えながら市場を選別していくと、結果として注目するエリアの一部が重なることは興味深い事実です。
私たちが現場で見てきた市場の成長性を、日本の大手企業は数百億円、数千億円という資本配分によって評価している、と見ることもできます。

大手企業は「米国不動産なら何でも買っている」わけではない
ここは個人投資家にとって最も重要なポイントかもしれません。大手企業が米国へ投資しているからといって、「米国不動産を買えばいい」という結論にはなりません。
むしろ、大手企業の投資方法を見ると、物件選び以前に市場選びを非常に重視していることが分かります。
州ではなく都市、都市ではなくSubmarketまで見る
例えば「Texasが成長しているからTexasの不動産を買う」だけでは十分ではありません。DallasとAustinでも市場は違い、さらにDallasの中でも人口、所得、学校区、治安、住宅供給、賃料、物件価格などはSubmarketによって大きく異なります。
国 → 州 → 都市 → Submarket → 物件という順番で投資対象を絞り込んでいくことが重要です。
日本から遠隔管理するだけではない
もう一つ、大手企業から学べることがあります。住友林業、大和ハウス、積水ハウスなどは、米国の現地企業を買収・活用しながら事業を拡大しています。つまり、日本からすべてを遠隔管理しようとしているわけではありません。
これは個人投資家にも共通します。米国不動産を購入した後には、PM(Property Management)による日常管理だけでなく、収支、修繕、賃料、保険、税金、売却などを継続的に確認するAMの視点が重要になります。
買った瞬間ではなく、売却までが不動産投資
不動産投資では購入価格ばかりに目が向きがちですが、大手企業は取得だけで投資を考えているわけではありません。取得・開発し、運営し、価値を高め、必要に応じて売却する。投資した資金を回収し、次の資産へ再投資するところまでが不動産事業です。
個人や中小法人による米国不動産投資でも、この考え方は変わりません。
個人資産・法人資産でも米国不動産を一度は検討してみる
では、日本の大手企業による米国投資から、個人や法人オーナーは何を学べるのでしょうか。「大手企業が買っているから、自分も買う」ということではありません。
重要なのは、資産を日本だけに置くことが本当に最適なのか、一度考えてみることです。
日本だけに資産を集中させる必要はない
日本で事業をしてきた経営者の場合、法人預金、日本株、日本不動産、生命保険など、資産の大部分が日本円・日本国内に集中しているケースがあります。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
しかし大手企業が国内市場だけに依存せず、成長市場へ資本を配分しているように、個人や法人でも地域分散という考え方を持つことはできます。
米国不動産はドル建ての実物資産になる
米国不動産を保有すれば、物件価値だけでなく、賃料収入や将来の売却代金も基本的には米ドルベースになります。つまり米国不動産への投資は、不動産への投資であると同時に、資産の一部をドル建てで保有することにもつながります。
為替変動は当然リスクになりますが、日本円だけに資産を集中させないという観点では、一つの選択肢になります。
法人資産として米国不動産を持つという考え方
米国不動産は個人だけでなく、法人資産として保有することもできます。法人の場合には賃料収入や将来の売却だけでなく、建物等の減価償却を法人全体の所得計算に反映できる場合があります。
また、法人生命保険に蓄積された資産を契約者貸付によって米国不動産へ段階的に組み替えるという考え方もあります。大切なのは「節税商品として米国不動産を買う」ことではなく、法人のB/Sに10年後、どのような資産を残したいのかという視点です。
「大手が投資しているから買う」のではなく、彼らの判断基準を学ぶ
住友林業、大和ハウス、積水ハウス、三井不動産、三菱地所、東急不動産、野村不動産。日本を代表する企業が米国へ資本を振り向けていることは事実ですが、それだけを理由に米国不動産を購入するべきではありません。
彼らから学ぶべきなのは「米国を買っている」という結果ではなく、どの市場に資本を配分するのかという考え方です。
どの国なのか。どの州なのか。どの都市なのか。どのSubmarketなのか。どのAsset Classなのか。いくらで取得するのか。誰が管理するのか。そして、いつ売却するのか。
これらを一つずつ判断した結果として、米国不動産があります。日本を代表する不動産会社やハウスメーカーが、国内だけではなく米国を将来の成長市場として選び、実際に大きな資本を投じています。
この事実だけでも、個人資産や法人資産を日本だけに置くことが本当に最適なのか、一度考えてみる価値はあるのではないでしょうか。米国不動産は「誰もが買うべき資産」ではありませんが、これから10年、20年の資産形成を考えるのであれば、少なくとも一度は検討する価値のある選択肢だと私たちは考えています。


Credi Techでは、米国不動産の購入だけでなく、現地での管理・運用から将来の売却までを見据えた資産形成をサポートしています。個人・法人での米国不動産投資をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
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