米国不動産投資 保有・資産管理

【実録】米国コンドミニアム火災後の再建|HOA保険・特別徴収・復旧工事の実務

ある日、当社がAsset Manager(AM)として管理していたテキサス州の投資用コンドミニアムで、大規模な火災が発生しました。

火元となったUnitは全焼。しかし、問題はそのUnitだけでは終わりませんでした。

コンドミニアムでは、建物の構造部分や共用部分などをHOA(Homeowners Association)が管理しています。そのため建物全体に被害が及ぶと、オーナー一人の判断だけで復旧を進めることはできません。

そして今回、火災とは直接関係のない他のUnit Ownerにまで、HOAからSpecial Assessment(特別徴収)の通知が届くことになります。

「自分のUnitで起きた火災ではないのに、なぜ自分まで負担しなければならないのか?」

さらに、HOA、保険会社、PM会社、工事会社など複数の関係者が絡み、復旧は簡単には進みませんでした。当社では最終的に現地まで赴き、関係者と直接面談することになります。

米国のコンドミニアムで大規模な火災が起きると、その後HOAでは何が起こるのか。そして、なぜ自分とは関係ないと思っていた火災が、他のUnit Ownerの負担にまで発展するのか。

実際に経験した約1年半の復旧プロジェクトをもとに、その裏側を紹介します。

※本記事は実際の案件をもとに構成していますが、オーナーおよび関係者のプライバシー、守秘義務に配慮し、物件名、会社名、金額等の一部情報を一般化・仮定しています。

火災は1つのUnitで発生。しかし問題は建物全体へ広がった

今回火災が発生したのは、テキサス州にある投資用コンドミニアムです。テナントによる偶発的な火災によって、当社がAMとして管理していたUnitは全焼しました。

当然、そのUnitについてはオーナー側の保険会社へ保険金請求を進めます。しかし、コンドミニアムの場合はそれだけでは終わりません。

【実録】米国不動産で火災発生|全焼から保険金請求を解決するまでの長期交渉米国の投資用コンドミニアムで実際に発生した火災事故。PM会社との連携、HOA保険との切り分け、Proof of Loss…

一つの建物の中に複数のUnitがあり、屋根、外壁、建物構造、配管、電気設備、共用部分などはHOAによって管理されています。今回の火災でも被害は火元となったUnitだけにとどまらず、建物全体の復旧が必要となりました。

ここが、戸建て不動産とコンドミニアムの大きな違いの一つです。

戸建てであれば、基本的にはオーナー自身の保険会社や工事会社などと調整しながら復旧を進めることができます。一方、コンドミニアムでは建物全体に関係する問題について、一人のUnit Ownerだけで勝手に工事を進めることはできません。

HOA側の判断、HOAが加入するMaster Insuranceの保険会社、PM会社、エンジニア、工事会社など、複数の関係者との調整が必要になります。

そして当社がこれまで米国のコンドミニアムを管理してきた経験上、問題が長期化する原因になりやすいのが、まさにこのHOAを中心とした関係者間の連携です。

火災発生から再建工事までの流れ

火災によって建物が大きな被害を受けても、すぐに工事会社が入って建て直せるわけではありません。今回の案件でも、次のような複数の工程を経ています。

火災発生

被害調査

HOA・保険会社による保険対応

解体工事

カビ・アスベスト等への対応

構造・工事範囲の確定

工事会社の選定

再建工事開始

完成・運用再開

特に大規模な火災では、単純に焼けた部分を修理すればよいわけではありません。安全性を確認し、損傷した部分を解体したうえで、カビやアスベストなどの問題が確認されれば、それらを適切に除去する必要があります。

その後、エンジニア等による確認を経て工事範囲を確定し、工事会社の選定、見積もり、Permit(建築許可)などを経て、ようやく本格的な再建工事へ進みます。

こうした一つひとつの工程についてHOAを中心に複数の関係者が判断するため、一つの調整が止まるだけでも、その後の工程全体が止まる可能性があります。今回も、復旧は長期プロジェクトとなりました。

工事費約100万ドル、保険金約70万ドル。それでも資金は足りなかった

建物の被害状況が整理され、具体的な復旧計画が進むにつれて、次に大きな問題となったのが資金でした。

本記事では実際の金額を非公開とし、説明のため一部の数字を一般化しています。今回の復旧工事費を約100万ドル、HOAのMaster Insuranceから支払われた保険金を約70万ドルとします。

工事費:約100万ドル
保険金:約70万ドル
差額:約30万ドル

「それなら不足する30万ドルを用意すればいい」と思うかもしれません。しかし、実際の災害復旧はそれほど単純ではありませんでした。

工事費と保険金の差額だけでは復旧できない

火災から建物を復旧するために必要となる費用は、工事会社へ支払う建築工事費だけではありません。

解体、カビ・アスベスト等への対応、設計、Engineering、Permit、専門家への費用、保険のDeductible、その他の関連費用など、さまざまな支出が発生します。さらに工事を進める過程で、当初の調査では分からなかった損傷が見つかれば、追加工事が必要になる可能性もあります。

HOAとしては、一つの工事見積もりと保険金との差額だけを見るのではなく、建物を最後まで復旧させるために必要となるプロジェクト全体の資金を確保しなければなりません。

そして今回、HOAが最終的に決定したのが、総額約70万ドルのSpecial Assessment(特別徴収)でした。

工事費が約100万ドル、保険金が約70万ドル。それにもかかわらず、さらに約70万ドルもの特別徴収が必要になる。この数字だけを見れば、Unit Ownerが疑問を持つのも当然です。

「なぜ別のUnitの火災なのに、自分も払うのか?」

今回、他のUnit Ownerにとって最も理解しにくかったのが、このSpecial Assessmentでした。

火災が発生したのは特定のUnitです。そのため、自分のUnitが火災の原因ではなく、直接大きな被害を受けていないオーナーからすれば、「火災を起こしたのは自分ではない」「自分のUnitが燃えたわけでもない」「それなのに、なぜ自分まで特別徴収を払わなければならないのか?」という疑問が出るのは当然です。

しかし、ここにコンドミニアム投資特有の仕組みがあります。

コンドミニアムは建物全体を共同で維持する

コンドミニアムでは、それぞれのオーナーが自分のUnitを所有する一方、建物の構造や共用部分などはHOAを通じて共同で維持・管理されています。

そのため、一つのUnitから発生した火災であっても、建物構造、屋根、外壁、共用設備などに被害が広がれば、それらを復旧する主体はHOAになります。そしてHOAの保険金やReserveだけで必要な費用を賄えなければ、HOAの規約等に基づき、各Unit Ownerへ追加負担を求めることがあります。

それがSpecial Assessmentです。

つまり、「誰のUnitから火災が発生したのか」と、「HOAとして必要となった建物全体の復旧費用を誰が負担するのか」は、別の問題として考える必要があります。

これは、米国のコンドミニアムを購入するときに理解しておくべき重要なリスクの一つです。

毎月のHOA Feeだけを見て「管理費はいくらか」を確認するだけでは十分ではありません。HOAのReserveは十分なのか、どのようなMaster Insuranceに加入しているのか、大規模修繕の予定はないか、過去にSpecial Assessmentが発生していないか。こうした建物全体の財務状態も、将来のキャッシュフローに大きく影響します。

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AMとして現地へ。工事計画と資金管理を直接確認

Special Assessmentが決まり、再建へ向けた計画が進み始めても、問題が解決したわけではありませんでした。

火災発生後、HOAやPM会社からさまざまな資料や報告が送られてきました。しかし復旧までの期間が長期化するなかで、当社としては書類やEmailだけを確認している状態では十分ではないと判断しました。

これは今回だけの問題ではありません。当社がこれまで米国のコンドミニアムを管理してきた経験でも、HOAが関係する問題では、オーナー側が必要としている情報とHOAから提供される情報に差があったり、回答に時間がかかったり、複数の関係者の間で話が止まったりすることがあります。

一方でUnit Owner一人では、HOAの判断を飛び越えて建物全体の工事を進めることはできません。

HOAとの連携が必要であるにもかかわらず、その連携がうまく進まない。

これが、米国コンドミニアムで大きな問題が発生した際に、解決まで時間を要する原因の一つだと感じています。

今回もオーナー側から見れば、「HOAが対応しています」という報告だけでは十分ではありません。本当に工事は進むのか。いつから、どのような工事を行うのか。その工事を完成させるだけの資金は確保されているのか。

そこで当社ではAMとして実際に現地へ赴き、保険会社、復旧工事を担当する工事会社、PM会社と直接面談しました。

確認したのは「工事計画」だけではない

現地で確認したのは、単に「工事はいつ終わりますか」というスケジュールだけではありません。

これまでの保険対応、工事範囲、今後の工事スケジュール、工事費用、保険金の状況、HOA側の資金、Special Assessment、今後必要となる資金などを一つずつ確認しました。

特に重要だったのが、工事計画と資金計画が一致しているかという点です。

どれだけ詳細な再建計画が作られていても、工事会社へ支払う資金が確保されていなければ、工事を最後まで完成させることはできません。

反対に、各Unit Ownerから総額約70万ドルものSpecial Assessmentを徴収するのであれば、その資金がなぜ必要なのか、既存の保険金やHOA資金とどのような関係にあるのか、その資金をどのように使って復旧工事を進めていくのかを確認する必要があります。

今回、わざわざ現地まで行った理由もそこにあります。

書類上で「工事が進んでいる」ことを確認するのではなく、実際に現場を確認し、関係者と直接話し、工事と資金の両面から本当に再建できる計画になっているのかを確認する。

これがオーナー側に立つAMとして必要だと判断しました。

火災から約1年半。復旧工事はようやく完了

現地で関係者と面談したからといって、それでAMの仕事が終わるわけではありません。むしろ重要なのは、その後です。

約100万ドル規模の再建工事は長期間にわたるプロジェクトです。工事が計画どおり進んでいるのか、次の工程へ移っているのか、工期に遅れが発生していないか、追加工事や追加費用が発生していないか、資金面で新たな問題が起きていないか。

当社では現地訪問後もPM会社などを通じて、継続的に進捗を確認しました。

「工事開始」ではなく「復旧完了」まで確認する

大規模修繕では「再建工事が始まりました」という報告を受けただけでは、案件が解決したとは言えません。オーナーにとって重要なのは、最終的に建物が復旧し、Unitが再び使用できる状態になることです。

今回の案件では、火災発生から被害調査、保険対応、解体、カビ・アスベストへの対応、工事計画、資金確保、Special Assessment、再建工事という長いプロセスを経て、約1年半で建物の復旧工事が完了しました。

一つの火災事故から、ここまで長いプロジェクトになるとは、多くの不動産オーナーが物件購入時には想定していないかもしれません。しかし、これも米国不動産を長期間保有するなかで実際に起こり得ることです。

今回の案件から得られた大きな教訓は、コンドミニアム投資では「自分のUnitだけを見ていればいい」わけではないということです。

自分のUnitの賃料、修繕費、テナントだけではなく、HOAの財務状態、Reserve、Master Insurance、大規模修繕、Special Assessmentなど、建物全体の状況が自分の資産価値やキャッシュフローに影響します。

そして問題が発生したときには、誰がHOAから必要な情報を取得するのか、誰がPM会社と調整するのか、誰が保険会社や工事会社と話すのか、誰が工事と資金の状況を確認し、最後まで進捗を追うのかという問題が出てきます。

今回、当社ではオーナー側のAMとして現地まで赴き、保険会社、工事会社、PM会社と直接面談し、工事計画と資金管理を確認しました。そして帰国後も継続して進捗を追い、最終的な復旧まで確認しました。

Asset Managementとは、平常時の収支を管理するだけの仕事ではありません。

火災、保険、HOA、Special Assessment、大規模修繕など、想定外の問題が発生したときに、オーナー側の立場で関係者をつなぎ、必要であれば現地まで入り、資産を守るために問題を解決まで追い続けること。今回の案件は、米国不動産におけるAMの役割が非常に分かりやすく表れた事例の一つだと考えています。

米国不動産は、購入して終わりではありません。保有中に発生するHOA、PM会社、保険、大規模修繕などの問題についても、オーナー側で継続的に管理していくことが重要です。

Credi Techでは、米国不動産の保有・管理・Asset Managementに関するご相談を承っています。現在保有している物件の管理体制や、現地で発生している問題についてお困りの場合も、お気軽にお問い合わせください。

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